アクセスがガバナンスを追い越すとき:エージェント時代のインサイダーリスク
セキュリティリーダーは今、AI エージェントのアクセスを最大の脅威と見ています。有効な対策は、権限を事前に一度決めることではなく、アクセスのたびにポリシーを評価することです。
- ガバナンスと保持
- アクセスと共有
- コンプライアンス
企業は、最も機密性の高いコンテンツへの「鍵」を AI エージェントに渡しています。そのスピードは、鍵の使い方を定めるルールづくりを上回っています。導入のスピードとガバナンスの成熟度とのこの差は、2026 年を象徴するセキュリティ課題になりつつあり、今ではセキュリティリーダー自身もそう認めています。
エージェントのアクセスが脅威の首位に
Exabeam の委託により Sapio Research が 2026 年 6 月に実施し、2026 年 9 月 16 日に公表した調査「The Agentic Insider: From Monitoring to Understanding」は、7 か国のセキュリティおよび財務の意思決定者 600 人を対象としています。この調査で、セキュリティリーダーの 48% が、過剰な、侵害された、または意図しないアクセス権を持って動作する AI エージェントを、現在自組織が直面している最大の脅威に挙げました。これは外部の攻撃者(28%)を上回り、侵害された内部関係者や悪意のある内部関係者(各 12%)を大きく引き離す結果です。セキュリティチームが長年追跡してきた脅威カテゴリーで、インフラの問題が攻撃者を初めて上回りました。
「エージェント」とは何を指すのか
調査が対象をどう定義しているかは重要です。著者らは、「限られた人間の介入で企業のリソースにアクセスし、行動を起こせる、目標主導の自律型システム」と「会話型チャットボット」を明確に区別しています。この区別に、問題の本質が凝縮されています。チャットボットはチャット画面の中で答えるだけですが、エージェントは行動します。契約書のリポジトリを読み、顧客レコードを取得し、メッセージを作成して送信し、基幹システムの記録を更新します。しかも設計上、人間の介入は限られています。Exabeam の Gabrielle Hempel 氏が関連する分析で述べているとおり、エージェントは「正当な ID、許可されたアクセス、想定どおりのツール、攻撃者なし」という状態でも、インシデントを引き起こし得ます。組織がエージェントに与える自律性が大きいほど(それこそがエージェントを導入する経済的な理由そのものですが)、タスクごとにエージェントが触れてよい対象を事前に厳密に決めて統制するやり方は、現実的ではなくなります。
手作業での範囲設定が破綻する理由
多くの組織が陥りつつあるのが、この落とし穴です。「エージェントのアクセス権が大きすぎる」という問題への反射的な対応は、アクセスの範囲を絞ることです。ロールを狭め、サービスアカウントを厳しくし、エージェントごとに権限をレビューします。これは最初のエージェントには有効です。しかし 50 個目のエージェントには通用しません。同じエージェントのタスクが時間単位で変わる場合や、アクセスが必要なコンテンツがメール、ファイル共有、CRM のレコード、そしてエージェントの利用を想定して棚卸しされたことのない構造化データにまたがる場合は、なおさらです。手作業での範囲設定は、リソースの集合もタスクの集合も固定されていて列挙できることを前提としています。エージェント型 AI は、この 2 つの前提を絶えず崩していきます。
監視と理解は別物
Exabeam のデータは、ガバナンスをおろそかにしていない組織でも、この状況が負担になっていることを示しています。セキュリティリーダーの 60% が AI セキュリティやガバナンス専用のツールを導入し、56% が既存の SIEM や検知プラットフォームをエージェントにも適用しています。それでも 27% は、行動に関するコンテキストと相関分析の不足を、監視における最大のギャップに挙げています。Exabeam の Chief AI and Product Officer である Steve Wilson 氏は、「組織は AI エージェントの監視で着実に前進していますが、活動を監視することは、行動を理解することと同じではありません」と指摘しています。監視でわかるのは、エージェントが何かを行った後で、何をしたかです。それを行うことが許されるべきだったかどうかを、事前に教えてくれるわけではありません。
セキュリティ問題の陰に潜む予算の問題
2 つ目の制約が、1 つ目の問題をさらに深刻にします。お金です。セキュリティリーダーの 55% が、CFO が納得する財務上の言葉でリスクを説明できなかったために、セキュリティ施策を延期または縮小したと回答しています。一方で、93% がセキュリティ部門と財務部門のリスク許容度はおおむね一致していると報告し、81% が CFO はサイバーセキュリティのリスクを大まかには理解していると答えています。ギャップは信頼ではなく、翻訳にあります。Exabeam の CFO である Mike Byron 氏は「CFO がサイバーセキュリティのリスクが本物かどうかを疑うことはめったにありません」と述べ、より難しいのは「投資がどのようにリスクを減らすのかを、測定可能なビジネスの言葉で理解すること」だとしています。特定の記録された判断(この ID は、この日に、この目的で、このデータへのアクセスを拒否された)を示せるガバナンスモデルは、監視ダッシュボードよりもはるかに予算の議論に結び付けやすいのです。
欠けているレイヤー:リクエスト時に判断するポリシー
これらを組み合わせると、実効性のある答えの形が見えてきます。それは、エージェントが行動した後の監視を強化することでも、行動する前に決めたエージェントごとの権限の一覧表を大きくすることでもありません。アクセスの時点そのものに置かれるポリシーのレイヤーです。このレイヤーは、何かが動く前に、リクエストのたびに、このデータをこの目的でこの ID(人でもエージェントでも)が使ってよいかを評価します。この判断は、いずれ実態に合わなくなるロールのために事前に一度決めておくのではなく、データ、ID、要求された操作の属性から動的に行う必要があります。さらに、許可か拒否かにかかわらず、すべての判断を記録する必要があります。そうすれば、適用の記録が、監査担当者と CFO の双方が必要とする根拠にもなります。
Kiteworks が Data Policy Engine で目指してきたのは、まさにこの方向です。Data Policy Engine は、データ、ID、要求された操作をポリシーに照らしてリアルタイムで評価し、ブロック、閲覧のみ、理由の入力が必要、許可のいずれかの指示を適用して、すべての判断を改ざんできない監査証跡に記録します。これをエージェント向けに拡張したものとして、Kiteworks は、AI のリクエストがデータに触れる前に同じチェックポイントを適用すると説明しています。ID の検証、属性ベースのポリシー評価、監査ログの記録を行い、エージェントの ID をそれを承認した人に結び付けます。同社はこの問題の重大さを率直に表現しています。AI エージェントは「独立した倫理的判断を一切行いません。明示的に禁止されていない限り、どのようなデータにもアクセスします」。
これは、エージェントの導入を遅らせる理由ではありません。アクセスを一度決めれば済むものとして扱うのをやめ、毎回判断するものとして扱い始める理由です。
自社の環境でエージェントのポリシー境界をどう設計すべきか検討している場合は、sales@kiteworks.com までメールでご連絡いただくか、お問い合わせください。ご質問に Claude や MCP の設定は不要です。エージェントカタログとアシスタントの対応状況もご覧ください。